愛川あさりの連休

 これから過去現在にわたる物語を紐解く前に愛川あさりなる人物とタイトルの説明をしておく必要があるだろう。
 まず、愛川あさりだがこれは私が夜依と名乗る前のいわゆる旧名である。とはいえフルネームで使用したことは皆無でほとんどあさりで名乗っていたことを付け加えておこう。
 そしてタイトルは後に詳しく察して知ってもらおうと願いつつ、この文脈からも汲み取ってもらえると思うが「涼宮ハルヒの○○」に影響を受けているに他ならない。わざわざ旧名を使わず「夜依の連休」でもいいのにこのタイトルなのは単純に音の響きの問題である。
 そんな前提条件でいよいよこのゴールデンウィークを振り返るに至るわけだ。





 毎年恒例行事のようにやってきながらサッカーのように前半・後半と分かれたり、はたまたアメフトのように4つのクォーターに分かれたりと姿を変えるそいつの今年の姿は言うなれば野球という表現が適切であろう。
 野球の観戦をまじめにやった事のない私だが、思うに観戦するに一番つまらないのは投手戦であろう。それも序盤。投手戦になるのか判断しかねる常態でいつ撃つかと高揚しながら結局は無得点で終わる回を1回2回ならまだしも、4回5回と来ると集中力も散漫となりつつ、やはり変化しないボードを眺めることとなる。
 もっとも打者が一巡するのに最長3回を要する野球にとって3回までは様子見と割り切り、無得点に終わることを前提とするのが野球人の暗黙の了解なのかもしれないがあいにく私は野球人ではない。
 今年の試合はまさしくそんな見るに耐えない投手戦から始まった。




 はたしてゲームが動き出したのは3回でそれも1回の裏からの規定事項としてあったものだ。打たれると判っていながら投げる投手の心境は測りかねるがその日即ち30日は快晴で、このまま6月を亡き者にして7月がやって来るのではないかと錯覚をもたらすほどだった。
 目的地になるべく人が居なく、なおかつ全国的にはそれなりに人が居なければならないという一見矛盾した条件を満たし、さらには親から昼食代をいただこう、などと言う策略があるとも知らずに電車は私たちを乗せて定時の10時48分に出発した。目的はオルタだ。結果の方は私より慈羽に聞いてもらいたい。彼女が記録する必要のない事をどこまで記憶しているかは未知数だと知った上で。
 この回はその程度のこと、続く4回はデッキの構築で首をひねる程度だったとここに付記しておこう。


 迎えた5回の表はいつもの面子のデッキ調整会だ。3日に津田沼でブロトの予選があるからで、大会前の調整会はもはや恒例のイベント前夜祭と化していた。そして私は3日の津田沼予選には参加しないのも判っていた。その理由はこの回の裏から始まるのだが、悲しいかなこれも規定事項の一言で片付けられてしまうのだろうか。
 そう5回の裏。私にとって最も恐るべき半絶対服従を強いられる存在で、死んでからも縁の切れそうにない姉上殿の帰郷である。どの人間にとっても姉上は恐ろしい存在でコレが兄だったらまだマシだったかと言うとあの性格が変わらなければ私の苦痛も変わらないので、要する変わりは無いってことだ。


 6回。この回から序盤の投手戦はどこへやら試合は誰の意思とも関係なく張り切りだしたコーヒーカップ並みの勢いで回り始める。
まずは祖父母の墓参りである。コレがまた遠く、我が地元に負けず及ばずの田舎そのものなのである。そのまま御炎祭(ひまつり)にまで出かけ、さらには那珂湊の市場にまで行く事になる。




 7回。ラッキー7という表現は七回の裏に逆転することが多いという事から生まれた野球用語なのだが、相手チームから見ればそれはアンラッキーに相違ないだろう。つまり何か起こるとしたらこの回で、私はこの回の警戒をものの見事に忘れていたわけだ。そんな7回は、いつ死んでもおかしくない不死身の伯母の見舞いに行き、その伯母の家に鎮座している多様のマンガの回収作業、さらにその足でもはや意識を保つのも危うくなった私の携帯電話の交換を済ませる超おしどりスケジュール。
 無事携帯交換まで終了したところで連絡、伯母のを心臓が止まったとかで病院にとんぼ返りを華麗にキメて集中治療室なんて始めて入ったね。
 そのまま伯母の娘、つまり私にとっての従姉妹の到着を待ち、コンビニのパンとおにぎりで夕食を済ませると、私と姉上は電車で先に帰宅。母上と従姉妹は病院付近(恐らく伯母の家)に泊まるって事で無事スリーアウトを迎える。


 8回。家族そろって外食とまぁ7回の忙しさがまるで嘘の様だが、その待ち時間を潰すために読み始めたのが涼宮ハルヒで午後のやることの無さも共鳴して1日で1冊読みきってしまった。
 実はハルヒ他本が箪笥(たんす)の中に私の手にとられるのを今や遅しと待っているのだが、いまだに手付かずな理不尽な目に遭っている方も多数いらっしゃるから、読む気にならなきゃ何年たっても本は読まないものだとここに実体験を基にした格言を記そう。


 とまぁここまでの試合経過を振り返っているうちにチェンジを向かえ、9回になってしまった。
 試合終了間際のこの回にも実は規定事項が私の脳内スケジュールに刻まれていて、それは部屋の掃除でありそしてカレーラムネなる珍味を飲み干すということなのだがその光景は明日、ヒーローインタビューの際語ろうとしよう。